ポルシェは1974年に911のフルモデルチェンジを行い、型式も901から930に変わった。
先行して発売されたターボ車は「930ターボ」と名乗ったものの、911の圧倒的なネームバリューに屈し、車名を911に戻している。
930はアメリカの安全基準をクリアするため、衝突を起こしても車体を破損しないように大きなフロントバンパーを装着している。
そのため、ビッグバンパーという愛称で呼ばれていた。
自然吸気エンジンとターボエンジンの2つがリリースされたのだが、本来930型はターボが搭載されたものである。
しかし、大きなフロントバンパーを装着していることで、この年式から930型と呼ばれるようになったのだ。
930型が開発されるまでの経緯
1960年代末にようやくスポーツカーとして盤石の座を誇りかけていたポルシェ911(901型)
この901型にターボチャージャーを組み合わせる試みは始まっていた。
しかし、当時のターボエンジンは減速後に再加速した際、コンプレッサーが機能するまでの遅延時間(ターボラグ)に悩まされており、一般車どころかレースでも採用されないほど。
開発を重ねタービンの小型化などで目途がたち、1972、1973年のカーレースで席巻するほどになる。
またまた、燃費や規則改正で行き場を失うが、市販車の開発にフィードバックされることになった。
1973年にこのターボエンジンを搭載した930型がフランクフルト・モーターショーで発表され、市販型が1974年にパリショーで公開されたのである。
スーパーカーブームによって日本でも人気に
オイルショックのあった当時、燃費のよくない高級スポーツカーである930型は売上が見込めないと懸念されていた。
しかし、ふたを開けてみると主要市場であるアメリカでは、こんな時代だからこそ高性能なマシンを販売する姿勢が称賛される。
究極のスポーツカーとして取り上げられた400台の930型は瞬く間に完売。すぐさま増産に追われることになった。
その後、日本でも同じタイミングでスーパーカーブームであり、人気漫画で930型が取り上げられると名声が高まることになる。
1978年には930型発表後も、生産が続けられていた自然吸気エンジンの901型も930型へモデルチェンジしたのであった。
ポルシェ911は930型で最後の予定だった
911は930型で最後とする計画があったのだった。これは1975年に発売されたポルシェ924を911の後継車種とする予定だった。
実際、ポルシェの中でも良好な販売実績を残しており、911は1981年で生産中止がアナウンスされたほど。
しかし、市場から継続を望む声もあり、924への代替計画は撤回されることになった。